免疫

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免疫 ~巷にあふれる「免疫力」なるもの~

巷では「健康」にまつわるもので溢れています。中でも最近雑誌やテレビでよく目にするのが「○○で免疫力アップ!」という言葉です。いろいろと気になる部分があるので少しお話を。

そもそも免疫機構の重要な役割は、細菌やウイルスなどからの感染に対する防御反応です。大まかに言って、もともと生体が持っている「自然免疫」と、後天的な「獲得免疫(ワクチン接種などで得られる)」があり、お互い密接に関わりあいながら我々の体を守っています。
ただしいつも外敵ばかりを標的にしてくれるわけではなく、誤って自己を標的とすれば関節リウマチや強皮症などの自己免疫疾患が引き起こされます。また、スギ花粉やピーナツは病原微生物ではありませんが、それらに対し免疫反応が起きれば花粉症や食物アレルギーなどのアレルギー疾患が引き起こされてしまいます。
冒頭で免疫「機構」と述べましたが、分かりやすく例えるならば自動車や飛行機など複雑な機械がスムーズに動くためのしくみです。そこではギアやオイル、電気コードの配線など、様々な部品がそれぞれ順序良く正確に機能することが必要です(壊すのは簡単です。どれか一つのギアをはずすかコードを一本切ればよいだけです)。つまり免疫機能を低下させるのは簡単ですが、うまく機能させることはなかなかに難しいのです。
依然として巷では「病気にならない元気な体」的な、バラ色のイメージで「免疫力」という言葉が多用されているようですが、本来は「上手に整える」イメージの方が適当かと思われます。なので、これさえすればOKといった1対1対応ではなく、生活環境すべてをひっくるめたバランス(きちんとした食事や運動に休養、ストレスへの適切な対処、状況に応じてワクチンの接種)で考える必要があるということです。

文責 小原