診療・各部門
健康長寿の秘訣とは? ~100/10000人に聞いて分かったこと~
皆さんの人生の目標は何でしょう。家庭や仕事、お金にまつわることなどいろいろある中、まずは
「健康で長生きすること」
が大切なのではないでしょうか。
私の専門は麻酔科です。主に手術を受ける際に、事前に患者さんの全身状態の評価を行うことが業務の一部です。医師になってかれこれ15年余り、これまでに全身麻酔や局所麻酔を含め10000人近くの患者さんを担当してきました。現在はサブスペシャリティーとしてペインクリニックや漢方、ときおり救急外来も担当しておりますので、実際はその倍近くになるかもしれません。そんな中で、時として「90歳を過ぎているのになんと元気な!」というような方がたまにおられます。(逆に「まだ50代なのに、なんという不健康か。この先が思いやられるな‥」という方もおられます。これは残念ながら大勢です…。)
手術にあたっては血液検査や画像検査、その他を定量的にデータとして評価するのが常ですが、それとは別に、あまりにも元気な方、たとえば。「御年95歳にしてピンピンしており、畑仕事を日課にしている」というような方(80歳を過ぎてエベレスト登頂に成功した、三浦雄一郎さんのような方を想像してみてください)には、特別に健康長寿の秘訣を教えていただくことにしておりました。ここでは75歳以上(後期高齢者)の方に絞ってお話をさせていただきます。なので、75歳以上=2000/10000、かつ、その2000人の中の、それも特別にお元気な方=100/2000人(手術を受ける後期高齢者の内、20人に1人くらいの割合で特別元気そうな方がいる、とも言えます)からのお話です。
「○○さんお元気ですね~。そのお年でこれだけ元気なのには何か秘訣があるのではないですか?」の問いにずばり答えは、
「とりたてて何も気にしていないし、気にしたこともなかった」
です。
ほとんどの方がこう言われました。当方としては、「食事に気を付けている」「適度な運動を心がけている」等の答えを期待していたのですが…(遺伝的な要素のほか、食生活や喫煙など環境因子の影響が大きいことがこれまでの研究により判明しています)。好意的に解釈すれば、「細かいことは気にしないでおおらかに生きる」ということでしょうか。確かに皆さんそういう雰囲気をお持ちですし、ことあるごとに「ありがとう」の感謝の意を周囲に伝えておられるのが印象的でした。考えてみれば、過度のストレスは健康の大敵ですし、日々感謝の心で生きること、かつそれができる環境にいることは健康にとって大いにプラスにはたらきます。また逆に、戦中・戦後の過酷な時期を乗り越えてこられた方がほとんどですから、それに比べ現代における日々の些細な事など取るに足らないことなのかもしれませんね。
では、やりたいように好き放題に生きていけばいいかというとそうでもないのでご注意を。前述した、不健康で先が思いやられる生活パターンの方々のほとんどは、おそらくそれまでに淘汰されてしまいます。太く短く生きることを目指す方以外にはお勧めできません。
まとめると、
「何事にもくよくよせず、おおらかに生きる。感謝の心を忘れずに」
といったところでしょうか。なんだかありきたりですが、人生の真実とはそういうものなのかもしれません。
文責 小原