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プレシジョン・メディシンと漢方
最近、プレシジョン・メディシンという言葉を耳にする機会が増えました。「精密医療」と訳されていることが多いのですが、もともとは2015年にアメリカのオバマ大統領(当時)が一般教書演説において、「遺伝子、環境、ライフスタイルに関する個々人の違いを考慮した予防や治療を目指しましょう」と発表したことに由来します。先日NHK特集でも放送されていましたので、ご覧になった方も多いのではないでしょうか。
最近ではがん治療において、高価で話題になったオプジーボ(ニボルマブ)や、かつて世間を賑わせたイレッサ(ゲフィチニブ)といった分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤が特に注目を集めているようですが、その起源を1800年前にまでたどる漢方医学もまた、プレシジョン・メディシンであると言えます。
西洋医学では例えば、イレッサはその使用に当たりすべてのがん患者さんが適応となるわけではなく、事前にEGFR遺伝子変異検査を実施し、陽性例にのみ適応となります。
漢方医学では例えば、葛根湯はすべての風邪患者さんに適応があるわけではなく、風邪のひきはじめで寒気がし、うなじから背中にかけてこわばりがあるが汗をかいていない例にのみ適応となります。さらに「証」というものさしで状態を把握し適応例を絞っていくわけですが、これは現代のような画像検査や遺伝子、血液検査などなかった昔の人々が苦労の末に編み出したプレシジョン・メディシンと言えるでしょう。
文責 小原