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「フレイル」とは? ~人はある日突然老いるのではない~
「あ~、もう歳やな~」
心はまだまだ若くても、日々加齢を実感する・させられる瞬間は多いと思います。その昔「青春とは心の若さである」と述べた詩人がおりましたが、とはいっても日々肉体は衰えていきます。疲れを知らぬしなやかな肢体を鞭のようにしならせ躍動していたあの頃は遠い日の彼方、若さとは失ってみて初めて気づくものです。
ただ、大病を患ったり大きなけがをしたりしたのでなければ、ある日を境に突然肉体が衰える、ということはありません。個人差はあれどもゆるやかなカーブを描きつつ、しかし確実に老いに向けて下降していくのです。ここで大切なのが、「健康で、介護を必要としない期間がどれだけ長いか」ということです。要介護の一歩手前だけれども、やりようによっては元気を取り戻すことができる状態、言い換えると「加齢に伴う様々な機能や予備能力の低下により健康障害に対する脆弱性が増加した状態」を、日本老年医学会は「フレイル(脆弱、的な意味合いです)」と定義し周知を呼び掛けています。
具体的には、数年の間にゆっくり体重が減ってきたり、体力が衰え疲れやすくなったりしてきます。がんやその他病気の精査がまずは大切ですが、異常がなければ加齢により健康障害を招きやすい状態になったと考え注意が必要です(本邦では高齢者の約10%がこの状態にあると考えられています)。
食事(栄養)や運動によりある程度の予防は可能ですが、まだ十分な解明はなされておらず、今後の研究が期待されています。
文責 小原